金魚姫
カルキの匂いが鼻の奥をツンとさす。


沈み掛けた夕日が水面を優しい茜色に染めていた。


25mプールの真ん中あたりでバチャバチャと水を叩くおとがする。


音がするほうに視線を向けると、手足を思いっきり動かして藻掻いている人がいる。

顔を水面から出しては沈んで大変苦しそうだ。


異常な空気を察したムサシはフェンスに前足をかけて心配そうに吠えた。


ヨータもとっさにフェンスによじ登った。


ムサシの大声がプールにこだまして響いた。


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