コイアイ〜幸せ〜
私が派遣の新人で入った時には、もう、山下秘書はバリバリと働いていた。

仕事が出来る女の人は、単純にかっこいいと思う。
だけど、ただかっこいいだけではなくて、あまり裏表を感じさせない人。
仕事中のカッチリした態度と、みんなで集まった時にチラリとみえる豪快な性格は、ある意味、相当魅力的なギャップになっている。

嫌な感じの裏表、陰険さや意地の悪さを感じさせない、サバサバした姉御タイプなんだと思う。





「担当は市田か、相手先から予定が届いていないってクレームが来ているぞ」


「はっ、いけないっ!忘れてました、すみません」


「すみませんじゃ済まないだよっ、どうしてくれるんだ」



頼まれていたことなのに、どうしよう・・・私、わたし・・・。



「どうしたの?金井君」


最初の頃、私は大きなミスをしたことがあった。


「聞いて下さいよ。新人の市田がミスりまして、相手先が怒ってきているんです」


チーフだった彼女は素早く金井さんから話しを聞くと、相手先に電話をかけ始める。


その時の私は、一体何をしていいのかわからなくなって、ただ、その場にたちすくむことしかできなかった。
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