コイアイ〜幸せ〜
美波ちゃんは、パウダールームで化粧を直していた。
鏡越しに、彼女の瞳に涙が溜まっているのがわかる。


「・・・美波ちゃん」


追いかけてきたものの、一瞬、私はなんて声をかけていいかわからなくなった。


「美波ちゃん、大丈夫?具合いでも悪・・・」


カタン。

彼女はコンパクトを静かに置くと、鏡越しに私と目を合わせる。


「なんで来たんですか」


その視線は、いつものほんわかしたものではない。

憎しみを持った、キツイ眼差しだった。


「・・・私を・・・笑いに来たんですか」


なんで、そうなるの?
私、美波ちゃんに何かしたんだろうか。




「美波ちゃん・・・」





私は、戸口から動くことが出来ない。

美波ちゃんの言葉の意味が、わからないから。



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