コイアイ〜幸せ〜
近頃の子供はませてるなぁ。
ここにいるのは、恋をしている、一人の女の子だ。
まぁ、好きなコは、たくさんいそうなんだけど。

私の小さな頃も、こんなマセガキだったんだろうか。

幼い背中を抱きしめながら、私はゆっくりと目を閉じる。

悩むがいいさ、貴方の人生だもの。


「でもね、このことはパパには内緒ね」


「え〜、ど〜してぇ〜」


顔を上げた娘は、少し不満げに眉を寄せている。


ガチャリ


その時、玄関の扉が開く音がした。


「ただいま」


靴を脱ぐ音と彼の声が聞こえる。


「だって、パパは、ちぃのことが大好きなんだから」


娘は、小首を傾げながら私を見つめる。


「わかんないけど、わかった。秘密だねっ」


そう言い残すと、ワンピースの裾をひるがえして彼の方に駆けていく。
その姿を目で追いながら、


――ちぃに、いっぱい泣かされればいいわ。


なんて、少し意地悪な気持ちを抱えて、私も娘の後をついていった。







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