コイアイ〜幸せ〜
悪魔の声にびびりまくる彼らを残して、私は松本さんに付いていく。


あんまり社員を怖がらせないで下さい。





執務室に戻り椅子に座ると、私はひとつ背伸びをした。

ん〜、やっぱり落ち着くな、ここ。



同じく、悪魔の住処、違った、自分のデスクにお戻りになられた彼は、退屈そうに頬杖をついている。


「紅茶をいれてくれるのを待っているのですが」



なに?
アレは待っているポーズなの?

私よりも早く戻ったんだし、凄く美味しい紅茶をいれられるのに、わざわざ待ってないで下さい。


「いれてくれるんですよね」


まあ約束していましたからね。

しょうがないか、私は立ち上がると紅茶セットを取り出して、お湯を沸かし始めた。



「私は、松本さんが上司で良かったです。・・・少しは松本さんの力になれているんでしょうか、信用してくれるようになったんでしょうか」


お湯が沸いている、こぽこぽと沸騰する音を聞いていると、心まで洗われているようだ。


ポッと言葉が漏れてくる。

私は愛情はいらないんです、きっと、信頼が欲しいんです。



「信頼ですか?」


「してますよ、とっくにね」


優しい声が聞こえた。
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