コイアイ〜幸せ〜
そう言えば、私は私服なんだった。


久しぶりの旅行だったから、シフォンの長めのブラウスに楽チンなスパッツ。
ミニスカートみたいにふんわりみえて、けっこう気にいってたりする。

毛糸のざっくりしたニットカーディガンをハンガーに掛けてから、私は少し笑った。

羊に囲まれたからなぁ。
羊臭かったらどうしよう。


途中でこんなことになっちゃったけど、楽しかったな。


ちょこんと遠慮気味にソファーに座ると、ゆっくり身体を横に倒した。


松本さんが、さっきのタオルケットを手渡してくれる。


む、なんか優しいぞ、この悪魔。


私が横になったのを確認すると、彼は、そっと執務室から出て行った。








静かな、私が動くと生地の擦れる音が聞こえるだけの静かな部屋。


ソファーから、かすかに優しい香りがする。


時々ここで横になっていた悪魔の、松本さんの移り香だと理解した途端、何故か私の顔が赤くなるのがわかった。


嫌じゃない。
だけど、知ってしまうと危険な香りなんだと思ってしまった。


何で私が照れなきゃいけないの?


不思議な感覚に、私は早く寝てしまおうと固くまぶたを閉じた。


< 224 / 310 >

この作品をシェア

pagetop