コイアイ〜幸せ〜
「もしデータが流出しているのなら、今頃私は、ここでのんびりとご飯なんか食べてはいられないんでしょうし」


それにしても気持ち悪いなぁ。

嫌がらせだとしたら、凄く手の込んだ嫌がらせだと思うんだけど、私は、長谷部さんにそこまで恨まれるようなことはしていないつもりだ。


この悪魔なら、いろんな所から恨まれていてもおかしくないんだけど。


くっそぅ、なんでこの男のパソコンじゃないんだろう。
私の社会的信用はガタ落ちじゃないか。


「今後はセキュリティーの強化が必要ですね」


松本さんは、私の気の抜けた答えに、呆れたように一つため息をついた。


しょうがないでしょう、頭に糖分が廻るのには時間がかかるんですから。


ミネラルウォーターで喉を潤す。
それから私は、どこかの名探偵めいた確信を持って、もう一度悪魔に問いかけた。


「松本さん、データはまだ見つかってはいませんね」


松本さんは、静かに答えた。


「えぇ、まだ見つかってはいませんよ」



そうなんだ、まだ事件は解決をしていない。
なのに、この男の余裕の笑顔はなんだっていうんだろう。
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