コイアイ〜幸せ〜
「ただいま戻りました」


そう言いながら部屋に入ると、あの悪魔の姿は見えない。


用事で出ていったのか、もう帰ってしまったのか。


どっちでもいいけれど、顔を合わせないことにホッと胸を撫で下ろした。


どうしてか安心している自分に苛ついてしまう。


私はどうしてしまったんだろう。


明日は仕事なんだし、また一緒に頑張らなきゃいけないのに。
たった一回のキスが原因で、関係がギクシャクするのは嫌だなぁ。


ま、こんなことをぐちゃぐちゃと思っているのは、私だけかもしれないんだけどね…。


部屋全体に目を向けると、彼のソファーに私が昼間使っていたタオルケットがまるまっている。


あれ?
私、きちんとたたんだつもりだったのにな。

そう思って、くたりとしているタオルケットをたたもうとソファーに腰を落とした。


バサリと広げたタオルケットから、優しい香りがただよった。
ソファーも少しあったかい。


松本さん、今までここで休んでいなのかな?
私が寝ちゃったこのソファーで。

ファブリーズとかしとけば良かったかもしれない。


いや、加齢臭では無いですよ?
なんか、匂いとか少し恥ずかしい感じがしたんだ。
< 237 / 310 >

この作品をシェア

pagetop