コイアイ〜幸せ〜
社内には、まだまばらに人が残っていた。


やっぱり私服の人が多い。

そうだよね、皆も休日に呼び出されちゃったんだよね。


「お疲れさま、ゆっくり休んでね」


私は、営業用のスマイルで挨拶をしながら玄関を目指す。


「お疲れさまです。私服も新鮮でいいです」


社員の、そんな社交辞令を笑顔を返しながら廊下を歩いていた。


薄暗いなぁ。
しょうがないか、休日だし。


私は、携帯電話を取り出して宗助の番号を呼び出した。


なかなか出てはくれない。まだ、忙しいのかな。


携帯電話の液晶を眺めながらボゥッと歩いていると、いきなり横から腕が伸びてきて、私は、部屋に引きずり込まれた。


そこは小さな給湯室。
なにが起こったか、よく理解出来ていない私の目の前に、あの女の子が立っていた。




「どうして、私では駄目だったの?」



彼女の瞳は涙に濡れて、真っ赤に腫れている。

可愛い顔の面影はなかった。



「どうして、貴方なのよ」



五人入ればいっぱいになるこの部屋で、彼女はジリジリと私との距離を詰めていく。


「貴方なんて、いなくなればいいのに」




それは、逆恨みでしょうか。

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