コイアイ〜幸せ〜
私は、床に落ちていた通話中の携帯電話を拾いあげてから、神様に、少しだけ感謝した。


「いたの、とは言わないから。探してくれて、ありがと」


緊張の糸が途切れて、私は、傍にあったシンクに手をついた。


「あっつ!」


給湯口から、まだ熱湯は出続けている。


「大丈夫かっ」


宗助が、慌てた様子で私に近づいてきた。


「古典的な逆恨みね。しくじった、もう少し注意していればこんな事にはならなかったのに。また助けてもらっちゃった」


「…迷惑ばっかりかけてごめんね」


給湯口の熱湯を止めると、宗助は無言のまま私の手を取って、水を流し続ける。



「そんな、大袈裟だから…」


その指がジンジン熱くて、宗助の手も、熱湯に触れていないくせにジンジンと熱かった。




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