コイアイ〜幸せ〜
「うん」


宗助に返事をしたあと、私は、あの悪魔に電話をかけようとした。



おかしいな。
いつもなら、何のためらいもなく電話をして、用件だけを言って切っていたのに。

緊張して、手が震えてしまう。



通話中。
相手から流れる呼び出し音。
一コール、ニコール、三コール。


報告の為の電話なのに、このまま出なくてもいいと思ってしまった頃に、相手と繋がってしまった。



『もしもし』


耳から入る、松本さんの声。


「山下です、今、お話をしてもよろしいでしょうか」


『山下さんですか、大丈夫ですよ。どうしました?』


まわりは静かなので、外に出ているわけではないらしい。


「社内で受付けの鈴木さんに会いました。逆恨みだと思われるのですが、彼女は私を恨み、危うく熱湯をかけられそうになりましたので、気絶していただきました」


細かい事を話すつもりはまったくなかったので、ざっくりとした報告だ。


『それは大変でしたね』


いや、思ってないでしょう。


「えぇ、労災と慰謝料は頂くつもりでしたから。それよりも、気絶したまま放置しておく訳にはまいりませんので、この件はよろしくお願いします」


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