コイアイ〜幸せ〜
『わかりました、至急、回収しておきましょう。警備会社のものを向かわせます』


回収って、仮にも受付け嬢だったんじゃないですか…。


「少し錯乱状態でしたので、気をつけるように伝えて下さい。私はこれで帰宅しますので」


なんだ、いつもと変わらないじゃないか。
私は、何を怖がっていたんだろう。



―――あのキスも、松本さんにはなんの意味もなかったんだ。


黒ヒョウにでも噛まれたと思って、なかったことにしよう。


通話を切ろうとして、耳から携帯電話を離そうとする。


『…………』


まだ何か、声が聞こえた。

「もしもし、すいません松本さん。携帯の電波が弱くて、よく聞こえませんでした」


思いっきり、切ろうとしてましたなんて、い、言えないな…。




『世の中には、聞かない方が良かったと思う事がありますよね。俺は、同じ事を言うのは嫌いですから、………それでも聞きたいですか?』


うっ、なんか嫌味を言われているんですが…。
気になるんだけど、私には聞き返す勇気はありません。


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