コイアイ〜幸せ〜
宗助のキスマークの上にキスをされてしまった。


今、そこは、ジンジンと熱くほのかに熱をおびている。


「ぬりかえるのは、簡単です」


「…もっと強い力でねじふせればいい」


耳元で囁かれる。




この人は、危険だ。


私の本能が逃げろと言っている。


ただ、私の感情のどこかは壊れてしまって、自然と視界がぼやけてきた。
そして、ゆっくりと冷たいモノが頬をつたう。







これは…涙……?





「…松本さんなんて、…大嫌いです」


私は、その冷たい拘束を振り払うと、襟元を押さえながら席を立った。


なんで涙が出たのかは、わからない。


前に襲われた時には、涙一つも出なかったのに…。





「仕事場は変えます。必要最低限の時以外には会いません。私を、他の人と一緒にしないで下さい」



「社会人としての義務は果たします。松本さんは、それで充分なんでしょうから」



やっと、それだけ言うと、近くにあった資料を手に取り、私は執務室を飛び出した。





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