コイアイ〜幸せ〜
私はその足で近くのトイレに駆け込むと、やけに荒くなってしまった呼吸を意識的に整えていた。


「なんなの、あれはなんだったのよ」


個室にこもり、独り言を呟きながら頬をつたう涙をハンカチでぬぐった。







悔しかった。


女として見られてたから。
私と宗助の想いを、踏みにじられたと思った。




悔しかった。


あのキスには何の感情もないと知っているから。




…悔しかった。


それなのに、感じてしまった自分自身に。




わからなくなる。


いつものように受け流して笑えばよかった。


それでなくても、怒るくらいですんだはずなのに。


けれど、出てきたのは、涙。



私は心の奥底で、ショックを受けていたんだ。



なんで?


…この感情は何?


どうしてこんなにも、私の感情は揺さぶられているの?







コツコツとヒールを踏み鳴らしながら頭を抱える。



まだ少し、ジンジンとする首筋。


まるで自分のモノみたいに、私の身体に痕なんて付けないで。



私を揺さぶらないで。


私の彼氏は、宗助なんだから…。




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