コイアイ〜幸せ〜
「笑って、聞き流して…よ…」


溜まっていた思いを吐き出していくうちに、見えている宗助の顔が滲んできた。


泣いていい。


その言葉は、こんなにも、私の心を溶かしてくれる。


「今、泣きそうだから、ダメ。泣き顔、汚いからもう帰って」


きっかけをくれた。
でも、これ以上迷惑はかけたくない。


だって、宗助に甘えることになる。
仲間に、こんな女の部分、わがままな自分を見せたくない。


目の前に立っている宗助を片手でトンと押すと、素早く中に入ってから玄関の扉を閉める。


「つららさん、……つららさん!」


扉の向こうから、宗助が私を呼ぶ声がする。


「宗助ごめんね、ありがとう、本当に今日はもう帰って」


「明日には、元気になるから。もう、迷惑はかけないようにする」


元カレのことを想って泣く私なんて、ほっといてくれていいから。


「つららさん、一人で泣くのはやめたほうがいい。俺じゃなくていいから、友達でもいいから」


涙を見せるのは嫌い。
そんなことで、同情をされたくはないの。



扉の前から人の気配がなくなったのがわかると、私は子供の様に泣きじゃくった。



< 33 / 310 >

この作品をシェア

pagetop