雨音色
何と言えば良いのか、
彼は自分の頭をフル回転させたが、口にすべき言葉が見つからない。
彼は、何度も何度も瞬きをして、呆然と彼女を見つめてその場に立ち尽くしていた。
そんな彼に、止めを刺すかのように、彼女は言う。
「愛する人が幸せになる為に何かをしてあげたいと思うのは、当然でございましょう?」
彼は2度目の眩暈を感じつつ、玄関にある靴箱に思わず手を置いた。
そして、ふらふらしながら、家に上がる。
「あの、お風呂にされるのですか?それともそのままお休みになりますか?」
彼は足をピタッと止め、彼女の方を振り向いた。
彼の顔は、
リンゴのように真っ赤になっていた。
怒鳴っているかのような口調で、彼はこう叫ぶ。
「・・・そんなことを言われたまま眠れると思うか!?
風呂などに入ったら、落ち着くものも落ち着けない。とりあえず水を飲む!」
「はい、かしこまりました」
「まったく、何でそんなことを突然・・・」
ぶつぶつと文句を言うかのように呟きながら、彼は自分の書斎へと向かっていく。
一方、彼女はにこにこと微笑みながら、台所へと向かった。