雨音色
「1つ。幸花を送ってくださったこと。


これは礼を言わざるを得ません。ありがとうございました」


彼が深々と頭を下げた。


彼らもそれに釣られて、深く頭を下げる。


少しの沈黙が続いた。


気まずい沈黙である。


壮介は、思わず唾をのみ込んでいた。


その音の大きさに、当の本人が驚いていた。


「1つ。・・・改めて、きちんとお断りさせていただきましょう。


・・・藤木壮介君、君を、幸花の結婚相手にすることはできない」


「お父様!」


「幸花は黙っていなさい」


父の厳しい声がした。


その視線は、真っすぐに壮介に注がれていた。
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