雨音色
その隣に座る牧が、静かに口を開く。
「山内様。
藤木壮介は、私がこれまで指導してきた弟子の中で、最も秀でております。
現在、彼の研究が評価され、
彼は政府の留学生として独逸への留学が内定しつつあります。
私が、あえて私財を用いて彼を自分の研究室に留め置いたのは、
何よりも彼の才能が素晴らしかったからです。
彼は私より優秀で、若い頃の私と比べて、
恐ろしいぐらいの早さで成長しております。
彼の父も優秀でしたが、彼自身、それに匹敵、いやそれ以上に優秀な人間です。
将来、彼は日本の刑法、
いや法律分野における権威の一人としてその名を間違いなく馳せますでしょう。
この私が、その事を保証します。
ですので、どうか、彼の能力を信じていただけませんか」
牧のその言葉に、壮介は目を見張る。
隣に座る牧は、真剣なまなざしを、山内家当主に投げかけていた。
どうしていつも、こうやって自分の味方でいてくれるのか。
その情の深さはどこまで続くのかと、彼は不思議に思うのであった。
しかし、彼は何も言わない。
難しい顔をしながら、壮介をただ見つめ、一言、こう呟くのだった。
「・・・今日のところは、これでお引き取り願いたい」
ぽつり、と零すように呟いたその一言には、
先ほどの彼の威厳は影をひそめていた。
藤木と牧は静かに立ち上がり、深く礼をした。
幸花が立ち上がる。
困惑したような顔で、必死に壮介を見つめるのであった。
しかし、壮介は一瞬だけ幸花の顔を見て、
小さく微笑むと、そのまま部屋を出て行ってしまった。
「・・・壮介さん・・・」
止めることもできず、
彼女はただその場でその背中を見つめているしかなかった。
「山内様。
藤木壮介は、私がこれまで指導してきた弟子の中で、最も秀でております。
現在、彼の研究が評価され、
彼は政府の留学生として独逸への留学が内定しつつあります。
私が、あえて私財を用いて彼を自分の研究室に留め置いたのは、
何よりも彼の才能が素晴らしかったからです。
彼は私より優秀で、若い頃の私と比べて、
恐ろしいぐらいの早さで成長しております。
彼の父も優秀でしたが、彼自身、それに匹敵、いやそれ以上に優秀な人間です。
将来、彼は日本の刑法、
いや法律分野における権威の一人としてその名を間違いなく馳せますでしょう。
この私が、その事を保証します。
ですので、どうか、彼の能力を信じていただけませんか」
牧のその言葉に、壮介は目を見張る。
隣に座る牧は、真剣なまなざしを、山内家当主に投げかけていた。
どうしていつも、こうやって自分の味方でいてくれるのか。
その情の深さはどこまで続くのかと、彼は不思議に思うのであった。
しかし、彼は何も言わない。
難しい顔をしながら、壮介をただ見つめ、一言、こう呟くのだった。
「・・・今日のところは、これでお引き取り願いたい」
ぽつり、と零すように呟いたその一言には、
先ほどの彼の威厳は影をひそめていた。
藤木と牧は静かに立ち上がり、深く礼をした。
幸花が立ち上がる。
困惑したような顔で、必死に壮介を見つめるのであった。
しかし、壮介は一瞬だけ幸花の顔を見て、
小さく微笑むと、そのまま部屋を出て行ってしまった。
「・・・壮介さん・・・」
止めることもできず、
彼女はただその場でその背中を見つめているしかなかった。