雨音色
「・・・あれ?」
男は確かに、晩さん会、と言ったはずだ。
それなのに、これは一体どういうことだろうか。
誰もいない。
食べ物も、飲み物も用意されていない。
ただの、バンケットホールである。
「・・・あの、晩さん会では」
彼は、先ほどの男に声をかけようと振り向いた。
しかし、いつの間にか、その姿は消えていた。
彼は、不意に天井の方に目を遣った。
シャンデリアが、彼の頭上で明るく輝いている。
ふと、数ヶ月前、幸花と初めて出会った、
お見合い会場となったホテルの天井を思い出していた。
綺麗なシャンデリアだった。
まばゆくて、目を細めなければ、直視できないくらいに。
・・・幸花も、シャンデリアのような、いや、それ以上に、眩しかった。
あまりに明るくて、真っすぐに見ることが出来なかった。
「・・・」
ふと悲しげな笑みを浮かべて、彼が入ってきたドアの方向へ踵を返した、
その時だった。
「壮介さん」