雨音色
「お嬢様。元気をお出しください。タマは・・・」


手を彼女の髪から離した。


彼女は次にかける言葉を見つけられなかった。


代わりに、幸花がその口を開く。


「・・・夢だったら良いのに」


鼻にかかった声で、呟いた。


「全部夢だったら良いのに。醒めてしまえば、それで・・・」


タマは何も言えなかった。


「学者とさえ結婚すれば、それで良かったのでしょう?

それなのに、何故・・・?」


しゃがれた声を、苦しそうに絞り出すと、再び、その瞳に涙が溢れ始める。


「幸花お嬢様。貴女様は山内一族の一員でございます。

お嬢様はそれに相応しい方と御結婚なさらなければなりません」


彼女は何も言わず、タマを見つめていた。


泣き疲れた顔が、青白い。
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