光~HIKARI~
きっと治らない・・・

そればかりが、頭を駆け巡る。



週末になればくる、哲弥は、奏を止めなかった。

1度止めようとしたことがあった。
刃物を取り上げようとすると、奏は暴れて泣きじゃくる。発作が起きる。

そんな奏を哲弥は何もできなかった。というよりは、しなかった。
「奏??気持ちは落ち着いた??」
笑ってそういう。

それに対して奏は何も言わない。
哲弥は、奏がする行動に対してはあまり口を出さない。
見ても、見ないふりをしていた。
奏がおかしな行動に出るたびに、母親に電話をする。

「どうしよう、かぁさん」
そう聞こえてくる。

哲弥はいつもそうやって、電話をする。
奏は、死にたいという気持ちを理解してもらおうとは思っていなかった。
みんなその気持ちを理解することは難しいはずだし。

でも、逃げたい一身で、死にたいって気持ちになる。
それは自分でも止めることのできない感情。
奏自身も、コントロールができなかった。

哲弥は、奏の行動を見張るようになる。それは、日に日にエスカレートする。
それが苦しかった。
毎日電話が鳴り、家に来れば、行動を見張る。そして、母親に電話をする。
そして、実家に居るパパにも、電話をするようになる。
一緒にいて落ち着くなんてことはなかったし、気が張り詰めるばかり。

「どうして、奏はこんなに見張られてるの??見張られるようなほど、奏はおかしいの??」
そう思う。苦しみばかりが増していく。
だから、薬を見ると飲んで楽になりたいと思った。
死ねるような薬ではないこともわかってはいたのに・・・。
もしかしたら・・・死ぬかもしれない・・・少しの望みだったのかもしれない。
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