心の中の宝物
ちょっとして先生が入ってきた。

授業なんか聞いていない。

ただ先生を見つめていた。


こんなに遠いんだね。


いつもは横で教えてもらうのに今は一番前と一番後ろ。

これ以上の距離を縮める事は決してできない。


は~

もうやめたい。

先生なんか好きになるんじゃなかった。

でも好きになりたくないと思うと気持ちをとめる事はできない。

すっごく泣きそうになる。

こんな私を見てくれていた人がいた。

でもそれを知るのはもっと先のこと。

本当にごめんね。

その時私はこうすることしかできなかったんだ。


「・・・し。夢梨!」

「え?あっはい?」

そんなことを考えていると急に先生にあてられた。

「何ぼーっとしてるんだ?聞いてるか?」

「あっはい・・・」

「じゃあここの答えは?」

え?

わかんないよ・・・

黒板の文字を見て混乱する。

「27」

私の困ってる姿を見てコウちゃんがこそっと教えてくれた。

「え?」

「27」

「27です。」

「正解!ちゃんと聞いてなよ。」

「はい。」

静かに着席する。


「コウちゃん。ありがと-」

「いえいえ。」

コウちゃんは前を向く。

コウちゃんがいて良かった。

でもそれよりも先生が私に気付いてくれたのが嬉しかった。


後4日頑張らないと・・・
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