心の中の宝物
「桜さんに手を上げてはいけません。桜さんをこんな風にしたのはあなた方です。まずは話を聞いてあげてください。」
先生はゆっくりお父さんの腕から手を離す。
先生がくれたチャンス。
無駄にしたらだめだ。
私は一呼吸して口を開いた。
「お父さん、お母さん聞いて。私ね中学に入ってこの家が嫌いになったの。この家が嫌いで・・・居たくなくて・・・いつも学校に1時間も前に行ってた。」
私の目に涙が浮かぶ。
「グス。朝起きるとね誰もいなくて・・・帰ってきても誰からもおかえりって言ってくれない。家の前に立つとね、今日はいるよね。って・・・いるはずもないのにいつも期待して帰ってきてたんだよ。
昔は仲が良かったよね。二人とも忙しかったけど、土日はみんなでご飯食べたり私の誕生日やクリスマスとかの記念日には絶対早く帰ってきてくれた。だから私ね、いつかはまた前みたいに戻れるんじゃないかってずっと願ってた。私が倒れたときも病院のドアが開くたんびにお母さんかな?お父さんかな?って思ってた。」
「ぅぅ・・・」
お母さんとお父さんも泣いている。
「でも・・・二人が来ることはなかった。私倒れたときに夢を見たんだ。お母さんとお父さんが私の看病してくれる夢。覚めてほしくないって思った。でもね・・・わかったんだ。その夢は、神様が見せてくれた最後の夢なんだって・・・
だってねその数日後にお母さんとお父さん離婚しちゃったんだもん。もう夢が叶うこともないんだなって思った。
本当はね離婚なんてしてほしくなかった。土日ぐらいは家に帰ってきてほしかった。お金持ちじゃなくてもいいただ親のぬくもりがほしかった・・・それが私の願いなんだよ。」
私はなんとか自分の思いを全部話せた。
先生は頑張ったねって感じで私の背中を撫でてくれた。