ひまわり畑と彼の記憶(短)
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「……ちょ、うざい」
成くんと別れてすぐに亜衣に電話した。
待ち合わせ場所にいた彼女の顔を見た瞬間に、何かが切れたように涙が出てきて。
口では酷いことを言ってる亜衣が背中なんてさすってくれるから、泣き止む方法を完全に忘れてしまった。
「結婚って……っ、大事って、バカじゃん私ばっ、か」
「だから吹っ切れって言ったのよ」
「だ、って、」
「止まってたのはタマだけ。周りに取り残されて、独りで焦って、あんた、本当にバカだよね」
「うぅー……」
なんで泣いてるのか。
もうわけ分かんなくて、どうでもよくなった。
あの日以来、どんなことがあっても泣かなかった。
泣き方すら忘れてしまったようで、自分でも不思議だった。