濡れた体温ごと奪って-Ⅱ-
突き付けられた現実
私が記憶喪失だと聞かされたのは、目が覚めてから二日経ってからだった。
私の名前も聞かされた。
今目の前にいる人は…私の婚約者だって言ってるけど…いまいちピンと来なくて…。
だけど、左薬指に嵌められた婚約指輪を見ると、本当の事だって事はわかる。
指輪には、翔矢さんと私の名前が刻まれてるから…。
「紗耶。退院したら、上手い物でも食いに行こうな」
「…うん」
翔矢さんは毎日病院に来てくれて、私と沢山話してくれる優しい人。