濡れた体温ごと奪って-Ⅱ-
夜の9時になり、漸く翔ちゃんが帰って来た。
「翔ちゃん、おかえり。ねぇ、どこ行ってたの?」
「ああ。ちょっとな」
ちょっとなって、なんだろう。
やっぱり仕事じゃないんだ。
どこに行ってたのか、言えないなんて…どこだろう…?
言いにくい所…?
「あ、ねぇご飯まだだよね。一緒に食べよう?」
「そうだな。普段料理しねぇから、味の保証はできねぇぞ?」
「味なんて、どうでもいいんだよ。作ってくれた事が嬉しいんだもん」
翔ちゃんが私の為に作ってくれた。それだけで十分なんだよ。