バベル


前嶋が笹野に頸動脈の切開を促す。




「……ごめんなさい、」


笹野が溢れる涙を抑えることなく言う。


「…は?」
怪訝そうな顔をする前嶋。

周りのみんなだってそうだ。


「私には、…でき…な…」

遂に彼女は崩れ落ちた。


その儚げな姿がすべて芝居だと気付いたのは何人だろう?



「何言ってんの?!やりたくない、出来ないって思ってるのはみんな一緒なんだよ!!」
優里奈が半狂乱になって怒鳴りつける。


「でも、私…もう嫌。見ていられません。」


「…あんたねぇっ!!」


優里奈が彼女に掴みかかったとき。





グサリ。


悲劇の音が鳴った。
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