バベル



「それを、離して下さい。」



怒りに震えた声で、青木が言う。



「…あんたに、とって…
大事、な人でも、俺には…
俺には、すっげぇ、
憎い相手なんだよ!!」



そう言って再び引き金に
指を掛けようとする皆川に


「離しなさい。」


冷静を装って彼に近づく青木。


「皆川さん…!」
「早まらないで下さい!」


皆川の考えいることがわかった
凜と優奈が声を揃える。


「俺は、もう死ぬんだ。


どうせなら…
恨みを晴らしてから、
死にたいよ。

だから…!」

そう言って
銃口を再び結花に向ける。

「離せっていってんだろ!」


ここに来て 初めて声を荒げた
青木に 部屋は静まりかえった。


「お前を先に殺してやるよ。」


「やめて!!
青木さんを殺さないで!」



結花が言う。


「青木さんを殺して、
何になるの?

私を殺して、すっきりする人は
貴方以外にもいるかもしれない。
でも、青木さんは何も悪くない!」


負傷した足を引き摺り

皆川に歩み寄る。


「殺すなら、私にしなさい。」


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