バベル
愛憎
戸倉は 青木に歩み寄って
彼を自分へと向き直らせた。
「僕のために、
死なないで下さい。」
「…貴方にとって、
私は邪魔者のはずですが。」
「ははっ、確かに。
でもね、僕が一番つらいのは
凜の泣き顔や
弱った姿を見ることなんです。
きっと、青木さんなら
わかると思います。」
「でも私は…!
結花を、彼女を守れなかった。
だったら…」
「いいえ、
貴方は彼女を救いました。
彼女が、
貴方の死を望むと思いますか?」
「……いえ。」
「だったら、生きてください。
僕と凜と、そして結花さんのために。」
凪の言葉に 青木は初めて泣いた。
大きな声をあげて。