バベル


《潤Side》


楓は、きっと俺を裏切れない。


俺は、きっと楓を離せない。


そうでしょ?楓。


人を好きになる、

一見、甘美に聞こえるが
一歩踏み外せば
恐ろしくもなり得る。


…そう、今の俺みたいに。


俺は
楓を真っ直ぐに好きではない。

狂った『好き。』なんだ。


自分でわかっているだけ
まだマシだと思うけど…。


でも 俺は本当に狂ってる。


だって

楓を今の仕事に就かせたのも

楓の上司を決めたのも

楓の担当する事件を起こしたのも



全部、俺なんだから。


もちろん、
楓がそれを知ることはない。

だけど、俺の裏の顔を
少しだけ見せている。

そうしなきゃ、
嘘がバレちゃうでしょ?


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