バベル
「俺…俺、父さんのこと…
殺したんだ。殺したんだよ…。」
「あ、そうなの?」
あたしの反応が薄いからか
彼は きょとんとしていた。
「あたしも
しょっちゅう喧嘩して
病院送りにしてるから、
特に何も思わないけど。」
「そ、そっか。」
「それにさ、自分の意志で
殺ったわけじゃないみたいだし。」
「っえ?何で…?」
「もし本当に意志があって
殺したんだとしたら、あんたは
こんなに震えてないと思うし。」
「俺の父さん、
国務大臣だったんだ。」
「あんたお坊ちゃまだったの?」
「まぁ、うん。
父さんは俺に大臣職を世襲
させるため、英才教育を
受けさせてきた。
俺は父さんが大好きで
父さんが喜ぶなら、って
必死で勉強した。」
そこまで言うと
彼は深呼吸し、
まっすぐあたしを見た。
「でも俺が高2の時、
父さんが週刊誌に撮られた。」