愛なんて無かった
第1章
同じ夜
ベッドが軋む音がやけに頭に響いて集中出来ない。
耳元で荒い息と共に囁かれる名前はあたしの名前じゃない。
どうやら、前の彼女の名前らしくもう何度も呼んでいる。
「ミホ」
じゃあ今日のあたしの名前は「ミホ」ってことで。
なんて思っていたらあたしに覆い被さる『彼』と目が合った。
「…気持ち良い?」
少し掠れた声に薄く笑って誤魔化す。
最中に話し掛けられるのは正直めんどくさい。
特に今日は快楽に溺れられない。
相性だ。
きっと合わないんだ。
先がない関係だから別にいいケド、早く終わって欲しい。
だから、あたしは下腹部に力を込めた。