愛なんて無かった
洗面所でタオルを手にしたリクは、遠慮って言葉知らないの?と言いたくなるくらい雑で、あたしの髪をクシャクシャにした。
水分を含んだタオルは重くて冷たい。
「意外に世話が焼けるんだな」
そう呟くリクに視線を向ける。
「うはっ。ネコみてぇだな」
「……」
そう言って笑うから、
その笑顔が温かいから、
あたしは俯いた。
その笑顔を受け止められない。
あたしにはもったいない。
そんな気がした。