愛なんて無かった
「……」
直ぐに反応できないあたしに『彼』は言葉を続ける。
「名前は?」
「…えっ?」
「名前。なんて言うの?」
散々「ミホ」と勝手に呼んでおいてこの『彼』はあたしの名前を知りたいらしい。
だから「ミホ」と答えた。
勿論ホントの名前なんかじゃない。
そう答えるあたしに、驚いたように目を少し見開いた『彼』の表情。
少しだけ寂しそうな瞳色をしたけど直ぐに笑顔に変わった。
「マジで?…なんつうか偶然」
「偶然?」
あれだけ「ミホ」と連呼しておきながらと心の中で苦笑した。