hikari【短編集】
「……ずるいよ。」
しばらくして、小さな声で希が言ったのが聞こえた。
そして……
目の前のドアが開いた。
「そんなに謝られたら……もう怒れないよ。」
そう言った希の目は真っ赤になっていて、見れば相当泣いたことがわかる。
「それより…私こそ、ごめんなさい。かーくんのこと、信じてるはずなのに……悠哉に浮気かもよって言われて、それで…すっかり思い込んじゃって……」
バカみたい。
希はそう言うと、自分の目をゴシゴシ擦って、俺にニッコリと笑ってみせた。
でも…
その笑顔は、みるみるうちに崩れていく。
「かーくんが浮気なんて……する訳ないのに…っ、…なんで、私、信じて待てなかったんだろ……?」
「希……」
「私、奥さん失格だね……こんなちょっとのことで、旦那さんのこと、信じられなくなるなんて……」
そう言ってまた泣き出してしまった希を、俺はギュッと抱きしめた。