hikari【短編集】
希の話を聞いていたら、何故か杉田と話がしたくなった。
『かーくん?あぁ…さっきまた部屋行っちゃった。…ちょっと待ってて。』
電話の向こうでバタバタと音がするのを聞きながら、待つこと数秒。
『……何だよ?中津。』
希が電話を代わったのだろう、今度は少々ご機嫌斜めの杉田の声がした。
「おぉ、杉田。さっきぶりー」
『だから何だよ?俺、今忙しいんだよ。用事ないなら切るぞ?』
俺は思った。
この言葉は嘘だな、と。
もし本当に忙しいなら電話なんか代わらないだろうし……
きっと、まだ昼間の俺の発言を気にしてるんだ。
よーし。
なら、追い討ちかけてやる!
「待って!用事あるって……俺、一番信頼してる杉田先生に言いたいことがあるんだよー…」
『……気持ち悪いな。』
鬱陶しそうに呟く杉田だが、今の俺にはそれが照れ隠しに聞こえるのだ。
「聞いてくれるー?先生ー」
『ウザい。…何だよ?』
「…ありがとう。」