hikari【短編集】
「ごめんな、希……」
衣装合わせを終えて帰る途中も、かーくんは私に謝ってばかりだった。
「…もういいよ。」
叱られた子犬のような目をして謝るかーくんを見て、私は少し罪悪感を覚えながら笑顔を向けた。
ここまで気にしてくれるとは……ちょっと意外。
「あー…寒い。……!」
いつかみたいに歩いて帰ろうと提案したのは私だったけど、さすが2月。
つい口に出てしまった『寒い』という言葉を聞いて、かーくんは無言で私の手を取り、自分のコートのポケットに突っ込んだ。
「かーくん……?」
「…これならちょっとは暖かい。……だろ?」
「……うん。」
かーくんのちょっとした優しさに、私の胸はキュンとする。
結婚が決まっても…私はずっと、かーくんに恋してる。
手を握り返して、私はかーくんに寄り添って歩いた。