hikari【短編集】



「希……」



開始時刻まであと3分。



「お父さん……」



ようやく私の目の前に現れたお父さんは、お母さんに背中を叩かれていた。



「もう…しっかりして下さいよ?バージンロードを一緒に歩くのは、父親の役目なんですから。」



「…わかってるよ。」



お母さんと喋るお父さんを見ていると、お父さんの目が少し赤く腫れていることに気付いた。



泣いたのかな……?



「じゃ、向こうで待ってるわね。頑張って!」



そう言い残し、お母さんは先にチャペルの中へ。



「……希。」



そろそろ入場だと合図をもらった直後、お父さんが小さな声で私を呼んだ。



「なに……?」



「一真くんとお腹の子と……必ず、幸せになりなさい。」



お父さん─






< 171 / 237 >

この作品をシェア

pagetop