hikari【短編集】
「希……」
開始時刻まであと3分。
「お父さん……」
ようやく私の目の前に現れたお父さんは、お母さんに背中を叩かれていた。
「もう…しっかりして下さいよ?バージンロードを一緒に歩くのは、父親の役目なんですから。」
「…わかってるよ。」
お母さんと喋るお父さんを見ていると、お父さんの目が少し赤く腫れていることに気付いた。
泣いたのかな……?
「じゃ、向こうで待ってるわね。頑張って!」
そう言い残し、お母さんは先にチャペルの中へ。
「……希。」
そろそろ入場だと合図をもらった直後、お父さんが小さな声で私を呼んだ。
「なに……?」
「一真くんとお腹の子と……必ず、幸せになりなさい。」
お父さん─