hikari【短編集】
「…ありがとうございます。」
ま…
こんなところを一真に見られようものなら、あいつは目くじら立てて『希に触れるな!』って言うんだろうな─
「じゃ…俺、そろそろ帰るわ。明日も仕事だし…」
時計を見ると…
もう23時を回っていた。
「あ…そうですよね。本当にすいません。かーくんが余計なお世話かけたせいで、こんな時間になってしまって…」
「ううん、大丈夫だよ。気にしないで。」
玄関先まで見送ってくれた希ちゃんは、最後まで俺に謝り続けてた。
本当律儀な子だよね…
「じゃ、また今度。」
「はい、おやすみなさい。」
希ちゃんと別れて、俺は夜風を受けながら考え事。
そしてしばらくして、おもむろに携帯を取り出した。
「…もしもし。…うん、一真送って今帰り。…いや、酔いざましに歩いて帰ろうかなー?って。」
希ちゃんと話してたら無性に佳純の声が聞きたくなって、電話をかけたのだ。