hikari【短編集】
なんて、そんな思いはかーくんには届かない。
いつもは鋭いのに、変なところで鈍いんだから…
ハンドルを握るかーくんの左手薬指に光る私とのペアリングを見ながら、心の中でため息をついた。
「…かーくん、あれから髪切りに行ってないでしょ?」
かーくんの家に着き、早速新聞紙を床に敷いて髪を切る準備をする。
まだ美容師免許も持ってない私に、かーくんは「俺が実験台になる!」と、前に一度髪を切らせてくれたのだ。
結果はまぁ…散々だったように思うんだけど、かーくんは全然文句を言わず、むしろ「すげぇ上手いじゃん!」と誉めてくれた。
後でちゃんと美容院に行って、綺麗に整えてもらうように言ったのに……
「行ってないけど?いいじゃん、別に。俺…これからもずっと希に切ってもらうから。」
「………」
それは…
どういう意味なんだろう?
「なぁ、希…」
「……なに?」
「俺の専属美容師になれよ。」
「………」