hikari【短編集】
その事実にも、かーくんがそれを覚えてることにも…
「…かーくんって、本当に不思議な人だよね。」
「……え?」
「だってさ、自分の誕生日も忘れる人なのに、そんな昔の些細な話……」
正直、私は悔しかった。
かーくんが大事そうに語るその思い出のこと、当事者のはずなのに全く覚えていないんだから…
「希、先に言っとく。…泣くな。」
かーくん……
「お前のことだから、どうせ自分だけ覚えてないのが悔しいんだろ?」
「……っ、」
ほら……
また変なところで鋭い─
もう鋭いのか鈍いのか、どっちかはっきりして…
「…図星か。」
「だって……」
「もういいって言ってるだろ?…覚えてないなら、また最初から作ればいい。」
え……?
「今日はその為に希を迎えに行ったんだ。…髪切るのは口実。」
そう言って、かーくんは持っていたチョコの箱を私に手渡した。