hikari【短編集】



俺が何も言わなくなったのが希のせいだと思ったのか、茉央は力強くそう言った。



そして希のいる方へと歩いて行き、呆然とする希の手を引いて俺の前に戻って来た。



「ママ、パパにごめんなさいして!」



「おい、茉央…?」



「はやくーっ!」



別にケンカした訳でもないのに、茉央は希に謝って欲しいようだ。



困惑する希に、俺は『茉央の言う通りにしてやれ』という気持ちを込めて、目で訴えてみた。



「…ごめん、なさい。」



俺の気持ちは希に通じたようで、希はそう言って俺に少し頭を下げた。



「パパ、いーい?ママごめんなさいしたからいーい?」



「…うん。茉央、ありがとう。」



茉央なりの気遣いが痛いほど伝わってきて、俺はすごく嬉しくなった。



「俺、今最高に幸せ!」



そう言って、目の前にいる希と茉央をギュッと抱きしめた。






< 234 / 237 >

この作品をシェア

pagetop