hikari【短編集】
俺が何も言わなくなったのが希のせいだと思ったのか、茉央は力強くそう言った。
そして希のいる方へと歩いて行き、呆然とする希の手を引いて俺の前に戻って来た。
「ママ、パパにごめんなさいして!」
「おい、茉央…?」
「はやくーっ!」
別にケンカした訳でもないのに、茉央は希に謝って欲しいようだ。
困惑する希に、俺は『茉央の言う通りにしてやれ』という気持ちを込めて、目で訴えてみた。
「…ごめん、なさい。」
俺の気持ちは希に通じたようで、希はそう言って俺に少し頭を下げた。
「パパ、いーい?ママごめんなさいしたからいーい?」
「…うん。茉央、ありがとう。」
茉央なりの気遣いが痛いほど伝わってきて、俺はすごく嬉しくなった。
「俺、今最高に幸せ!」
そう言って、目の前にいる希と茉央をギュッと抱きしめた。