hikari【短編集】
「…はい//こちらこそ、ご迷惑かけると思いますが、どうか、よろしくお願いします。」
しっかりしてるな…
希ちゃん。
ひょっとしたら、一真よりしっかりしてるかも…
「…兄貴。」
そんなこんなで、一真と希ちゃんが帰る時間がやってきた。
「ん〜?」
先に希ちゃんを車に乗せ、一真は俺を振り返り、玄関まで戻って来た。
「な…なんだよ?」
「兄貴も……早く結婚出来るといいな。」
なっ…!?//
こ、この野郎…っ!!
「じゃあ…元気で、な…」
「お、おぅ…お前も、な。」
もう少し気の効いた言葉の1つくらい、かけてやれればいいのに…
そう思うだけで、実際は間抜けな言葉しかかけられなかった。
大きくなった弟の背中。
それを見てると、もうあの頃の甘えん坊の弟はいないことを実感させられた。
『頑張れよ…一真。』
言えないその言葉を胸に、俺は静かに、弟の背中を見送った。
―END―