hikari【短編集】
★パパ side kazuma
俺は『あの時』のことを絶対に忘れない自信がある。
それは、冬を目前に控えた、少し肌寒い日のことだった。
「……かーくん。」
かつての大事な生徒であり、今でも俺の一番大事な人である希が、いつもより小さな声で俺を呼んだ。
「ん?なに?」
心なしか…
顔色が悪い気がする。
「どうした?希…」
「あの、ね……」
こんな希は、3年前に俺が離島に異動になった時以来見たことがない。
俺と目を合わせようとせず、今にも泣き出しそうなのを必死に堪えてる─
「怒ら……ない?」
「……?あぁ。」
突然『怒らない?』と聞かれ、俺は訳がわからないまま、とりあえず頷いた。
「……で、……の。」
「え?」
「…子供、できた…の。」