hikari【短編集】
空耳……?
今さっき、希が『一真さん』って言ったのが聞こえたような─
まさか…な。
気のせいだ、気のせい!
だって希は、いつも俺のこと『かーくん』って呼んでるし…
ま、まぁ…別に俺としては、呼び方なんてどっちでもいいんだ。
でも、敢えて言わせてもらうなら、たまにでも名前で呼んでくれたら嬉しい…かも。
「か……ず、ま…さん。」
そんなことを考えてると、また俺を呼ぶ希の声が聞こえた。
こいつ…
もしかして起きてんのか?
ヤバイ…襲いそう─
「…だ、い…す、き…」
もう…
これは無理だ─
希のその言葉で覚醒してしまった俺はその晩、一睡も出来なかった。