hikari【短編集】
また…
そんな可愛いこと言って─
もう無理、限界。
「…ひゃっ!!」
今が朝だとか関係ない。
眠気もどっかに吹っ飛んだ。
俺は希の肩を両手で掴み、馬乗りになって希を見下ろした。
「かー…くん?」
「希…俺、腹減ったな。」
一晩中我慢した偉すぎる狼の目の前には今、格好の獲物がいる。
「え…じゃあ、朝ご飯…今から作るね?」
この状況で朝ご飯かよ…
少々…いや、だいぶ天然な希に呆れつつも、俺は希の耳元まで近付いて、こう言った。
「…いや、飯はいらない。希……お前を、食わせろ。」
「……っ!!//や、ちょっ……かー…く、まっ…て、んあっ…!」
もう…離さない。
お前は一生…俺だけのもの。
「愛してる、希……」
今はまだ…知らない。
希はもう、俺だけのものとは言えなくなることを─
俺たちが『それ』に気付くのは、もう少し後の話だ。
―END―