hikari【短編集】
「♪♪〜♪、♪〜♪♪…」
また…
あの子守唄だ─
今度は俺ではなく、原作者の希が歌っている。
希のは一味違うというか、やっぱり上手い。
『優しくてあったかい感じ』と陽翔が言ってたが、まさにそんな感じだ。
「結愛、寝た?」
「うん。」
寝室から出てきた希に聞くと、短い返事が返ってきた。
茉央はと言うと…
今日はいつもより俺から離れようとしなかったから、さっき俺の下手な子守唄で寝かしつけた。
今は俺の胸の中で、可愛い顔して眠ってる。
「なぁ……希。」
「なに?」
「子守唄……歌って。」
あれを聴いてると、なんだかすごく落ち着くんだ。
「なに…急に。どうしたの?」
「別に、どうもしないよ。ただ…聴きたいだけ。」
訳のわからない頼みにも関わらず、希はそれ以上何も聞かないで、あの子守唄を歌い始めた。