hikari【短編集】
「俺が引けばよかったのに……」
薄い意識の中で、そんな言葉が聞こえた気がした。
目を開けて左側を見ると、メガネをかけてパソコンに向かっているかーくんがいた。
「かー…くん?」
「ん?あぁ…希、起きた?」
パソコンを打つ手を止め、メガネを取ってこっちに来たかーくんは、私に体温計を渡す。
「はい。計って、熱。」
「……うん。」
それからしばらくして出た数字に、私は驚いて声も出なかった。
「見せて……え?39.2!?」
なんか…
視界が揺れる─
意識を保つのがやっとなくらいで、結構辛い…
「希……その風邪、俺にうつせ。」
え…?
そんな時、かーくんが思いも寄らぬことを言った。
「辛いだろ…?俺、希の風邪なら喜んでもらう。だから…俺にうつして……」