hikari【短編集】
……………
佳純は何も答えない。
波の音だけが聞こえる。
なんだろう…
このやってしまった感は。
「は……る、と……くん。」
しばらくして、名前を呼ばれた。
恐る恐る顔を上げると、そこには静かに涙を流す佳純がいた──
「え……か、佳純?」
「……いい、の?」
何が?
「本当にっ……私、なんかでっ……いいの?」
え…?
もう何が何だかわからない。
けどこれは……
一応成功、でいいのか?
そう思うと、いつしか緊張は解れ、だいぶ冷静になってきた。
「…いい。俺は、佳純だから結婚したいんだ。」
泣いている佳純を目の前に、俺はそう言った。
「佳純……俺と、結婚して下さい。」
確かな答えが欲しくて、俺は佳純にもう一度同じ言葉を繰り返した。
今度は……
迷いなく、はっきりと。
「……はい。」