hikari【短編集】
「ただいま〜!」
……あれ?
いつもなら、すぐに希の『おかえり!』という声が聞こえるはずなのに……
今日は──
出迎えすらなかった。
鍵は開いてたし、頼み事をした希が、俺が帰って来る前にどこかに行くことはまずあり得ない。
おかしいな……
「希〜…?」
疑問に思いながらも、俺はリビングへと足を進める。
ちなみに茉央は、さっきドアを開けた途端に走って家の中に入っていったので、今側にはいない。
買い物ついでにおもちゃ付きのお菓子を買ってやったから、多分俺の部屋かどこかで開けてるんだろう。
あ……
今はそれより希だ。
「なんだ……いるじゃん。」
リビングに行くと、確かにそこには希の姿があった。
希はこちらに背を向け、ソファーに座ったまま黙っている。
「希、買ってきたけど?……どうしたんだよ?」
俺が声をかけても、希は何も言おうとしない。
心配になって希の側に行くと、希は涙を流しながら携帯を握りしめていた。
その手は……
小刻みに震えていた。